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医学警悟(古訓醫傳)デジタルビュアー

宇津木昆台『医学警悟(古訓醫傳)』全六巻 ・ 全306頁 ── 原本画像/翻刻原文/書き下し文(ふりがな付)/現代語訳の四層対訳

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原本画像(巻一・11丁 「序論・医の本旨」)

原本 巻一・11丁 「序論・医の本旨」

③ 日本語訳(現代語訳)

そもそも医学の書物は実に広範で、扱われていない事柄は一つもない。
だが医術の要点は、病を治すというただ一筋の道から外れることがなく、人体より外のことを論じるものではない。
人体が病を起こす原因は千差万別で、一人として同じ者はいない。そうである以上、医書がどれほど広範であっても、なお足りない部分があるかのように見える。
なぜなら、人はそれぞれ生まれつきの体質が異なり、病もまた、風・寒・熱のうちどれが主でどれが従となるかによって、一つひとつ異なるからである。
風・寒・熱の違いに、体質の違いまで重なれば、病状は次々と現れて、際限がなくなる。

② 書き下し文(ルビ付)

医籍いせき広博こうはくにして、そなはらざるところなし。
ようやまいするの一途いっとでざるときは、人身じんしんそとろんずるものなし。
人身じんしんやまいいた所以ゆえんは、千差万別せんさばんべつにして、一人ひとりとしておなじきものなきときは、医書いしょ広博こうはくなるも、らざるところあるにたり。
なにとなれば、人々ひとびと稟賦ひんぷおなじからず、やまい風寒熱ふうかんねつ主客しゅかくありて、みなことなり。
風寒熱ふうかんねつことなるをもって、稟賦ひんぷおなじからざるにくわふるときは、病状びょうじょういよいよでて、いよいよきわまりなし。

① 原文(翻刻)

夫醫籍廣博ニシテ備ハラザル所ナシ
其要病ヲ治スルノ一途ニ出ザルトキハ復タ人身ノ外ヲ論ズル者ナシ
人身ノ病ヲ致ス所以ハ千差萬別ニシテ一人トシテ同ジキ者ナキトキハ醫書ノ廣博ナルモ猶足ラザル所アルニ似タリ
何ントナレバ人々稟賦同ジカラズ病モ亦風寒熱ノ主客アリテ皆異ナリ
風寒熱ノ異ナルヲ以テ稟賦ノ同ジカラザルニ加フルトキハ其病状愈出テ愈窮リナシ

原本画像(巻一・38丁 「方剤の運用(小柴胡湯ほか)」)

原本 巻一・38丁 「方剤の運用(小柴胡湯ほか)」

③ 日本語訳(現代語訳)

体内の水分が枯らされ、その残りまでもが熱に押し出されて、すべて外へ攻め上へ迫っていく。そのため胃の中には一滴のうるおいも残らず、熱がこもって蒸れ、内側がいっぱいに詰まった状態の熱である。だから必ず便が出なくなり、乾いた糞のかたまりができるのだ。
「潮(しお)」というのは、潮が満ちてくるときには、海に面した岸辺の小さな水路に至るまで、どこもかしこも水が満ちてあふれないところはない、ということだ。
潮熱でも同じで、熱が腸や胃に勢いよく満ちあふれ、そのあり余る勢いが押し寄せて、体の水分を外へ押し出し、胃の外から皮膚の表面に至るまで水分を満ちあふれさせるのである。
ところが、これを解説する人たちは、なぜそうなるのかという理由を突きつめて考えず、潮の満ち引きのように決まった時刻にやってくる熱だ、と説明している。
また、ある説では全身にこもって満ちる熱だと言い、また別の説では午後から夜にかけて現れる熱だと言っている。
これらはどれも「潮」の字を、熱だけに片寄った言葉づかいと受け取ってしまい、その熱が水分を上へ攻め外へ迫り出させるという肝心な点には目を向けていない。
そうした人々の説を聞き、その文章を読むと、発熱・身熱・灼熱・悪熱などをきちんと区別しているように見える。しかしこれを実際の病状に照らし合わせてみると、あいまいでぼんやりしており、よりどころとなる確かな根拠がない。
なぜなら、発熱も身熱も灼熱も悪熱も、同じように時に現れたり時に去ったりし、どれも全身に満ちてくるものだからである。それならどんな区別を立てて、これらを実際の病に照らし分けられるというのか、できはしない。
それゆえ、時には、上へ迫り出す水分のほうが主役となり、胃の熱のほうが脇役にまわるような潮熱もあるのだ。
だから、熱という側面だけでこの潮熱を理解しようとしてはならないのである。
『傷寒論』陽明篇にこう述べている。陽明病で潮熱を発し、便はゆるく、小便はふつうに出て、胸からわき腹にかけての張りが取れない場合には、小柴胡湯がこれを治す主薬となる。
このような潮熱を、決まった時刻にやってくる熱だと言えるだろうか。午後から夜にかけて現れる熱だと言えるだろうか。いや、そうは言えない。
この病証は、陽明の胃の中の熱が水分を胸やわき腹のほうへ押し出し、その熱が水分と一緒になって、居場所を胸脇へと移したものなのである。
だから腸や胃から下の部分は穏やかで病的な熱がない。それゆえ条文では「便はゆるく、小便はふつうに出る」と述べているのである。
これらのことから考えてみると、潮熱とは、水分を押し出して上へ攻め外へ迫らせる働きをもつ胃の熱であることに、疑いの余地はない。
またこうも言っている、その……

② 書き下し文(ルビ付)

つくせられ、余波よはねついだされて、みな外攻がいこう上迫じょうはくす。ゆえ胃中いちゅう一滴いってき滋潤じじゅんく、欝蒸うつじょう満実まんじつするねつなり。ゆえかなら不大便ふだいべん燥屎そうしあるなり。
ちょうとは、潮水ちょうすいまさきたときうみひんするところ小渠しょうきょまで、ことごと満渋まんじゅうせざることなし。
ねつ腸胃ちょうい突満とつまんして、余勢よせい滔漫とうまん水液すいえきいだして、胃外いがいより肌表きひょういたるまで、満渋まんじゅうせしむるなり。
しかるに説者せっしゃしか所以ゆえんきわめずして、潮水ちょうすいときさだめてきたるがごとねつなりとす。
またせつ一身いっしん満渋まんじゅうするのねつとす、また午後ごごより暮夜ぼやづるのねつとす。
みなちょうもって、熱一偏ねついっぺん形容けいようりて、水液すいえき上攻外迫じょうこうがいはくせしむるに、けず。
げんき、ぶんるは、発熱はつねつ身熱しんねつ灼熱しゃくねつ悪熱おねつとう弁別べんべつあるにたれども、これを実病じつびょうちょうするときは、糢糊もことして適拠てききょなし。
なにとなれば、発熱はつねつ身熱しんねつ灼熱しゃくねつ悪熱おねつも、とききたり、ときり、みな一身いっしんちてきたる。なん弁別べんべつありてか、これを実病じつびょうちょうせんや。
ゆえ間々まま上迫じょうはく水液すいえきしゅとなりて、胃熱いねつかくとなるの潮熱ちょうねつあり。
これねつのみをもって、この潮熱ちょうねつかいすべからず。
陽明篇ようめいへんふ、陽明病ようめいびょう潮熱ちょうねつはっし、大便溏だいべんとう小便自可しょうべんじか胸脇きょうきょうちてらざるものは、小柴胡湯しょうさいことうこれつかさどる。
くのごと潮熱ちょうねつとききたるのねつとせんや、午後ごごより暮夜ぼやはっするのねつとせんか。
しょう陽明ようめい胃中いちゅうねつ水液すいえき胸脇きょうきょういだでて、ねつ水液すいえきともに、くらい胸脇きょうきょうてんずるものなり。
ゆえ腸胃ちょうい以下いかして病熱びょうねつなし。ゆえ大便溏だいべんとう小便自可しょうべんじかふ。
これりてこれをれば、潮熱ちょうねつは、水液すいえきいだして、上攻外迫じょうこうがいはくせしむるの、胃熱いねつなることうたがいなし。
またふ、

① 原文(翻刻)

竭セラレ、其余波其熱ニ推出サレテ、皆外攻上迫ス、故ニ胃中ニ一滴ノ滋潤モ無ク、欝蒸満実スル熱ナリ、故ニ必ズ不大便燥屎アルナリ。
潮トハ、潮水ノ方ニ来ル時、海ニ浜スル処ノ小渠マデ、咸ク満渋セザルヿナシ。
其熱腸胃ニ突満シテ、其余勢ノ滔漫、水液ヲ推出シテ、胃外ヨリ肌表ニ至ルマデ、満渋セシムルナリ。
然ルニ説者、然ル所以ヲ推究メズシテ、潮水ノ時ヲ定メテ来ル如キ熱ナリトス。
又或説ニ一身ニ満渋スルノ熱トス、又午後ヨリ暮夜ニ出ルノ熱トス。
皆潮ノ字ヲ以テ、熱一偏ノ形容ニ取テ、水液ヲ上攻外迫セシムルニ、眼ヲ着ズ。
其言ヲ聞、其文ヲ見ル或ハ、発熱身熱灼熱悪熱等ノ弁別アルニ似タレドモ、コレヲ実病ニ徴スルトキハ、糢糊トシテ適拠ナシ。
何ントナレバ、発熱身熱灼熱悪熱モ、亦時ニ来リ、時ニ去リ、皆一身ニ満テ来ル、何ノ弁別アリテカ、コレヲ実病ニ徴センヤ。
故ニ間々上迫ノ水液主トナリテ、胃熱客トナルノ潮熱アリ。
コレ熱ノミヲ以テ、コノ潮熱ヲ解スベカラズ。
陽明篇ニ云、陽明病、発潮熱、大便溏、小便自可、胸脇満不去者、小柴胡湯主之。
此ノ如キ潮熱、時ニ来ルノ熱トセンヤ、午後ヨリ暮夜ニ発スルノ熱トセンカ。
此症陽明胃中ノ熱、水液ヲ胸脇ニ推出テ、其熱水液ト俱ニ、位ヲ胸脇ニ転ズル者ナリ。
故ニ腸胃以下、和シテ病熱ナシ、故ニ大便溏、小便自可ト云フ。
是ニ由テコレヲ観レバ、潮熱ハ、水液ヲ推出シテ、上攻外迫セシムルノ、胃熱ナルヿ疑ナシ。
又云、其

原本画像(巻二・37丁 「診察法(腹診)」)

原本 巻二・37丁 「診察法(腹診)」

③ 日本語訳(現代語訳)

〔前頁から続く〕そうでなければ、医者として本来望むところを尽くしたとは言えない。
声の澄み具合や濁り具合、咳やえずきの様子、においがさまざまに変化することなども、どれもよくよく注意を払わなければ、その良し悪しを見分けることは難しい。
医学を学ぶ者は、この点に努めて取り組みなさい。
腹候弁(腹部の診察についての論)
そもそも腹部の診察は、脈をとる切診の一種であって、望・聞・問・切の四診のなかでも要となるものである。だから、くわしく見きわめないわけにはいかない。
これはただ腹だけを診るのではない。胸・背・腰・すね・手足にいたるまで、丁寧に手で押したり撫でたりして、その肉づきの厚さ薄さ・硬さ柔らかさを観察し、皮膚の色のかさつき具合やつや、その良し悪しを見て、それによって陰陽と虚実を見定めるのである。
医者は病人に向かい合い、まず脈をとり、顔色や舌のこけ(舌苔)を見、声を聞き、どこが苦しいのかを尋ねる。そのうえで病人の左側に座り、はじめに自分の右手で胸の中央あたりを左右に押し分け、続いて病人の左の肋骨のあたりを撫で押し、乳のすぐ上から脇腹の下のほうにいたるまで、部位ごとに手のひらでていねいに診ていく。そしてまず虚里の拍動を確かめ、その拍動の高い低い・弱い強い・浅い深いによって、気・血・水のどれが主でどれが従か、また陰陽・虚実を見分けるのである。
右側についても、同じように準じて診ていくとよい。
左右の胸と肋骨のあたりを診おえたら、今度は指先をみぞおちに移し、軽く胸の中央を数回押し下げて、みぞおちが硬いか柔らかいかを確かめる。次に指を左右に開いて両脇を押し下げ、みぞおちの骨(岐骨)から斜めに肋骨にそって指をすべらせ、左右・上下のひきつれ(拘急)、つかえや硬さ・柔らかさ・強弱、皮膚と肉づきの厚さ薄さ、傷あとの有無などを診る。さらに指をみぞおちに戻し、正中線(任脈)の両わきを押し下げ、押しては下げ、下げては押しして、へその中央とその両わきまで診ていく。
そこで気持ちを静かに集中させて、へその下にある腎間の拍動(生命力のあらわれとされる動き)を確かめる。
さらに手のひらで左右の両脇を押し、背中のほうから抱えるように……〔次頁へ続く〕

② 書き下し文(ルビ付)

……ずんば、本懐ほんかいとはがたし。
声音せいおん清濁せいだく咳哇がいあい臭気しゅうき種々しゅじゅへんずるとうも、みなこころもちゐるにあらずんば、善悪ぜんあくしん得難えがたし。
学者がくしゃこれをつとめよ。
腹候弁ふくこうべん
腹候ふくこうは、切脉せつみゃくいつにして、四診ししんようなり、つまびらかにべんぜずんばあるべからず。
これただはらうかがふのみにあらず、胸背腰脛手足きょうはいようけいしゅそくいたるまで、せつにこれを按撫あんぶして、にく厚薄堅軟こうはくけんなん視察しさつし、いろ枯沢善悪こたくぜんあく望察ぼうさつして、もっ陰陽虚実いんようきょじつ診定しんていするなり。
医者いしゃ病人びょうにんたいし、みゃくしんし、顔色舌胎がんしょくぜったいのぞみ、声音せいおんき、苦悩くのうするところひ、しかしてのち病人びょうにんひだりし、右手みぎてもって、心胸しんきょうあいだ左右さゆうあんけ、しかしてのち病人びょうにん左肋さろく按撫あんぶし、乳上にゅうじょうより季脇ききょういたるまで、部位ぶいごとに、手掌しゅしょうもってこれを診察しんさつし、虚里きょり動気どうきうかがひ、高低微甚沈浮こうていびじんちんぷりて、気血水きけつすい主客しゅかく陰陽虚実いんようきょじつ弁別べんべつするなり。
みぎたこれにじゅんじてうかがふべし。
すで左右さゆう胸肋きょうろくうかがおわりて、ふたた指頭しとう心下しんかてんじ、軽々けいけいむね中央ちゅうおう按下あんかすること数回すうかい心下しんか鞭濡こうじゅうかがひ、ゆび左右さゆうひらき、両脇りょうきょう按下あんかし、岐骨きこつよりななめほねしたがふてゆびくだし、もっ左右上下さゆうじょうげ拘急こうきゅう痞鞭濡堅強弱ひこうじゅけんきょうじゃく皮肉ひにく厚薄こうはく繊痕せんこん有無うむとうしんし、またゆび心下しんかてんじ、任脉にんみゃく両傍りょうぼう按下あんかし、あんしてくだし、くだしてあんし、もっ臍中さいちゅうならびに両傍りょうぼういたる。
ここいてこころひそめて、腎間じんかん動気どうきうかがふ。
手掌しゅしょうもって、左右さゆう両脇りょうきょうし、背部はいぶよりよう……

① 原文(翻刻)

……ンバ、医ノ本懐トハ言ヒ難シ。
声音ノ清濁咳哇、臭気ノ種々ニ変ズル等モ、皆能ク心ヲ用ユルニアラズンバ、善悪ハ診シ得難シ。
学者コレヲ勉ヨ。
腹候弁
夫腹候ハ、切脉ノ一ニシテ、四診ノ要ナリ、詳ニ弁ゼスンバアルベカラズ。
コレタヾ腹ヲ候フノミニアラズ、胸背腰脛手足ニ至ルマデ、切ニコレヲ按撫シテ、其肉ノ厚薄堅軟ヲ視察シ、其色ノ枯沢善悪ヲ望察シテ、以テ陰陽虚実ヲ診定スルナリ。
医者病人ニ対シ、先脈ヲ診シ、顔色舌胎ヲ望ミ、其声音ヲ聞キ、其苦悩スル所ヲ問ヒ、而後ニ病人ノ左ニ坐シ、先医ノ右手ヲ以テ、心胸ノ間ヲ左右ニ按シ分ケ、而後病人ノ左肋ヲ按撫シ、乳上ヨリ季脇ニ至ルマデ、其部位ゴトニ、手掌ヲ以テコレヲ診察シ、先ツ虚里ノ動気ヲ候ヒ、其高低微甚沈浮ニ因テ、気血水ノ主客、陰陽虚実ヲ弁別スルナリ。
右モ亦コレニ準ジテ候フベシ。
既ニ左右ノ胸肋ヲ候ヒ了リテ、再ヒ指頭ヲ心下ニ転ジ、軽々ニ胸ノ中央ヲ按下スルヿ数回、心下ノ鞭濡ヲ候ヒ、指ヲ左右ニ開キ、両脇ヲ按下シ、岐骨ヨリ斜ニ骨ニ従フテ指ヲ下シ、以テ其左右上下ノ拘急、痞鞭濡堅強弱、皮肉ノ厚薄、繊痕ノ有無等ヲ診シ、又指ヲ心下ニ転ジ、任脉ノ両傍ヲ按下シ、按シテ下シ、下シテ按シ、以テ臍中并ニ其両傍ニ至ル。
是ニ於テ心ヲ潜メテ、腎間ノ動気ヲ候フ。
又手掌ヲ以テ、左右ノ両脇ヲ推シ、背部ヨリ擁……
🔒

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