慢性の不眠|「肝火か脾虚か」で迷うのは、単一証で見ているから

一般弁証からMLMN 10層へ

症例: 50代男性。1年以上、夜中に何度も目が覚める。日中は頭が重く、食後に眠い、軟便気味、イライラ。舌は淡・歯痕・やや黄膩苔、脈は弦滑。

① 一般の弁証論治なら

肝火上炎か心脾両虚かで迷う。イライラ・弦脈なら肝火、歯痕・軟便・食後の眠気は脾虚、膩苔は痰湿。竜胆瀉肝湯か帰脾湯かで決めきれない。この"迷い"こそ単一証モデルの限界。

② MLMN 10層で読むと

L2 病因飲食の不摂生(脾を傷る)+ストレス(肝を鬱する)の複合病因
L3 臓腑肝と脾が同時に病む(肝脾不和)。どちらか一方ではない
L4 気血津液脾虚→痰湿が生成(歯痕・膩苔)。痰が気の巡りを塞ぐ
L6 六経病勢は半表半裏〜裏。少陽の枢機不利(弦脈)
L7 三焦中焦に痰湿が停滞し上焦の心神が濁される→痰擾心神の不眠
L10 時間1年以上の慢性化。虚実挟雑として組む

③ 何が変わったか

二択で迷うのでなく、肝脾が同時・痰湿が絡む"痰擾心神+肝脾不和"という立体。治療は瀉肝でも単純な健脾でもなく、中焦(L7)の痰湿を捌いて気機を通すのが起点。竜胆瀉肝湯でも帰脾湯でもなく温胆湯系の発想に着地する。

「どの証か」で迷ったとき、答えは"どれか1つ"でなく"複数層の重なり"であることが多い。
関連ページ: 症例一覧MLMN理論10層で読む臨床推論を支えるシステム