東洋医学臨床推論支援システム

古典の知見を多角的に提示し、臨床家・研究者の推論を支える設計研究

本システムは、東洋医学の古典文献・腹診・鍼灸情報・本草知識を構造化し、MLMN理論の多層フレームワーク上で参照・比較・記録できるようにするための研究開発です。AIによる自動診断や処方決定を行うものではなく、臨床家・研究者が情報を多角的に整理し、推論の幅を広げるための環境として設計されています。

システムの位置づけ

東洋医学の臨床は、長年の経験と古典の知識の蓄積に支えられてきました。一方で、現代の臨床家は限られた時間の中で多くの情報を扱う必要があり、古典文献・腹診所見・鍼灸経穴の知識・本草の使い分けなどを横断して参照することは容易ではありません。本システムは、こうした参照負荷を軽減し、臨床推論の整理を支援することを目的としています。

診断・処方の決定は臨床家自身が行います。本システムが提供するのは、決定の前段階にある「情報の比較・整理・構造化」の支援であり、決定そのものを代替するものではありません。

本システムが行うこと

本システムが行わないこと

臨床情報の取得設計:五つの中核入力

本プロジェクトでは、9層へ情報を配置する前段として、何をどの診察から取得したかを明記します。中核入力は、腹診、背部兪穴診察(背候診)、舌診、脈診、問診の五つです。これに発症から現在までの時間経過と、治療後に何が変化したかという反応記録を加えます。

取得源主に記録する原情報
腹診緊張、軟弱、抵抗、圧痛、温度、動悸、部位差・左右差
背部兪穴診察兪穴周囲の緊張、陥下、圧痛、温度、皮膚、経穴反応、左右差
舌診舌質、舌形、潤燥、裂紋、歯痕、舌苔の色・厚薄・偏在
脈診部位、浮沈、遅数、強弱、大小、長短、緊張、滑濇、左右差
問診主訴、発症、先行事象、増悪・軽減、既往、生活、環境、過去の治療反応

五つの入力を一つの証へ即座に圧縮せず、原観察と候補解釈を分けます。また、各入力を特定の一層だけへ固定しません。複数の入力が同じ仮説を支持する場合、不一致によって反証する場合、現時点では判断できない場合を区別して9層へ配置します。

問診構造設計の現状: 設計中・未実装・未提供の研究テーマです。臨床利用可能なシステムとして提供されているものではありません。

問診項目の設計方向

従来の漢方問診票は、症状を個別に列挙する静的な多項目チェック形式が主でした。本プロジェクトでは、これに対して以下のような方向性で問診構造を検討しています:

これらはあくまで設計上の検討段階であり、実装・運用に至るには、対象とする臨床家層、入力負荷、データ管理、安全性確認など、多くの追加検証が必要です。

古典文献コーパスの現状

本システムが参照する古典文献コーパスの整備状況は、文献ごとに異なります。

9中国古典医書(構造化済)
4日本古方派文献(未校正OCR結果含む)
3鍼灸・腹診資料群

具体的には、素問80篇、霊枢81篇、難経81難、傷寒論728条、金匱要略1,110条、神農本草経、本草綱目序例、格致余論、内外傷弁惑論、医学警悟306頁、問答策、傷寒雑病論類編、先哲医話などを構造化データとして収録しています。各文献の検証段階は Safety & Disclaimer および各個別ページをご参照ください。

医学警悟ビュアー(無料試し読み): 宇津木昆台『医学警悟(古訓醫傳)』全306頁の電子版から、序・跋・緯篇冒頭の一区切り24頁を、原本画像・翻刻原文・書き下し文(ふりがな付)・現代語訳の対訳でご覧いただけます。

24頁無料ビュアーを開く →

全306頁版は会員向け公開準備中です。閲覧を希望される方はお問い合わせください。

技術的補助としてのAI

本システムでは、古典文献のOCR処理、テキストの正規化、検索インデックスの構築などにAI技術を活用しています。これらは主に整備工程上の補助技術であり、臨床判断の主体ではありません。AIが行うのは情報処理の支援であって、診断・処方の決定ではないという原則を一貫しています。

今後の展開

本システムは継続的な研究開発の中にあり、機能・コンテンツの追加・修正が随時行われます。臨床利用可能なシステムとしての提供時期、提供範囲、利用条件などは現時点で確定していません。研究進展に応じて段階的に整備していく予定です。

更新はSNS・noteでも発信しています

長文解説はnote、短い研究メモはX、古典画像や鍼灸の雰囲気はInstagramで補足します。